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『 ひと口のマドレーヌが呼び覚ます歓び 』 ~ 失われた時を求めて ~
2022年05月05日
マドレーヌ(madeleine)とはフランス発祥の焼き菓子ですが、
私にとってマドレーヌといえば、フランス人の作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』を思い出します。
まだマドレーヌを知らなかった頃、バターの香り漂うお菓子と紅茶の場面は、憧れに満ちたものでした♪
さて、マドレーヌの発祥は諸説あるのですが、古いものは中世に遡ります。
ちょっと面白いので、この諸説を振り返ってみましょう♪
◆一つ目の説は、
マドレーヌ・・・それは愛娘の幸せを願ってやまない美食王の親心が託されたお菓子だったというもの。
17世紀、美食王として名高かったポーランドの「スタニスラス・レクチンスキー王」
(後に亡命してフランスのロレーヌ公となる王様)には、フランスに嫁いだ愛娘がいました。
愛娘とは、時のフランス王ルイ15世の正妻「マリー・レクチンスカ王妃」です。
ルイ15世といえば、何といっても公妾として歴史に残る、ポンパドゥール夫人が有名です。
この公妾の存在によって、正妻であったマリー妃は寂しい日々を送っていて、
美食好きな王の為に、美食でルイ15世の気持ちを惹こうとしていました。
こんな際、美食王スタニスラスから愛娘マリー妃に届けられたものが「マドレーヌ」でした。
マドレーヌはあっという間にベルサイユ宮で人気となり、後にコメルシー地方の菓子店がレシピを
買い取り、一般に売られるようになり今に至るというもの。
美食王と愛娘の残したお菓子は、現代まで残る銘菓となりました。
◆2つめの説は、マドレーヌの名産地であるコメルシーで誕生したというお話です。
ある時、レッツ枢機卿であった、Paul de Gondih氏はミューズ地方のコメルシー(Commercy)に
追放 されてしまいました。
彼は地元の貴族を受け入れてもらう為に、定期的に城で宴会を開催していたそうです。
頻繁に宴会が行われていたため、招待客を飽きさせない為に料理担当をしていたMadeleine Simoninは
宴会で常に様々な工夫を凝らしていたそうです。
ある時、彼女はベニエの生地を改良してふわふわした小さなケーキに変更しました。
このお菓子は招待客にたいへん喜ばれ、彼女の名前からマドレーヌと付けられたというものです。
その後、今でもコメルシーでは、美しい曲木の箱に詰められたマドレーヌがお土産の代表格として
愛されています。
◆さて3つ目の説は、最も有名でスタニスラス王の城で誕生したというお話です。
(一つ目の説のおおもとになったお話です)
1755年、ルイ15世の時代、フランスの東部にロレーヌという公国がありました。
その公国を治めていたのが、ルイ15世の妃の父親であるスタニスラス・レクシンスキ王 でした。
彼は美食家で大食漢として有名だったそうです。
ある日、彼はコメルシー(Commercy)という町でで宴会を開きました。
ところが、宴たけなわ、宴会半ばで厨房の料理人とパティシエがケンカをし、最後のデザートを
台無しにして出て行ってしまったそうです。
しかし! 食いしん坊の王様のためにお菓子を出さないとどんな処罰をされるか分かりません。
料理人達が困り果てていると、召使いをしていたマドレーヌ・ポルミエが祖母から教わっていた
お菓子生地をホタテの貝殻を型にして焼き上げ、それをデザートとして供しました。
これを王様は大変気に入って、そのお菓子を彼女の名前を取ってマドレーヌと付けました、
というものです。
どのお話も想像すると楽しいのですが、いずれにしても、
マドレーヌという名前は、女性の名前からつけられたようです。
さて、現在私達が作っているマドレーヌと、昔に作られていたマドレーヌは少々レシピが違っていたようですが、19世紀以前のマドレーヌのレシピは残っていません。
最初にマドレーヌのレシピは1812年の「Le Cusinier imperial」に書かれています。
これには、小麦粉、砂糖とバターを鍋に入れて温め、卵を加えて生地がなめらかになるまでかき混ぜます。
次に型に生地を流し、中火の窯で焼き上げます、という風にだけ書かれています。
1828年、カレームは「Pâtissier royal parisien」でマドレーヌについてさらに詳しく書いています。
そして1873年、ジュール・ゴッフェはさらに詳しいレシピを作りました。
これは次のように記載されています。
小麦粉、卵と砂糖を混ぜ、やわらかいバターを加えます。
型の2/3を流し、すべての型には同じ分量ずつ流して焼き上がりを均一にするようにします。
その通りに作ると、『中身が真っ白くてきめ細かい生地で、表面がなめらかなマドレーヌができあがる』と述べています。
さらに彼は「驚くべきマドレーヌ」という名前を付けたパイナップルや苺やピスタチオなどを加えたレシピを考案しました。
実際に作ってみると、マドレーヌの材料は非常にシンプルで、その当時でも十分に手に入れることができるものばかりです。ご家庭でも比較的簡単に作ることができるお菓子の一つとされています。
その為、 マドレーヌは誕生して200年以上たった今でも愛されているお菓子です。
フランスを周ってみると、マドレーヌはチョコレートなど加えていない一般的なナチュール(ナチュラル)なものの他に、チョコレートをコーティングしたり、プラリネなどを加えたマドレーヌがあります。
さらに、フランボワーズやピスタチオなどのパウダーを加えたマドレーヌも作られています。
Imo Kuri Nankinでは、このマドレーヌ生地にサツマイモを練りこみ、ほんの少し五島列島の一番塩を加えることで、砂糖の量を減らし、穏やかで優しい風味のマドレーヌをお楽しみ頂けます。
さて冒頭でも述べましたが、マルセル・プルーストの自著小説『失われた時を求めて』の冒頭で主人公はマドレーヌの匂いから遠い過去の記憶を呼び覚まされて、20世紀を代表する長編小説の幕が開きます。
「私は、そのマドレーヌの一片を浸けてほとびさせたお茶を一匙、機械的に、唇にもつていつた。
(中略)瞬間、私は身震いした。何か異常なものが身内に生じているのに気づいて。
なんとも言えぬ快感が、孤立して、どこからともなく湧き出し、私を浸してしまつているのだ」
(『スワンの恋 Ⅰ 失われた時を求めて 第一巻』プルースト 著/淀野隆三・井上究一郎 訳/1958年)。
主人公はある日、紅茶に浸したマドレーヌを食べた瞬間、不思議な感覚に襲われ、その理由を探るうちに、叔母にお茶に浸したマドレーヌを食べさせてもらった事に気づき、昔すごした田舎町の記憶が次々と蘇る、というシーンがあるのです。
このシーンが有名になったことから、味覚や嗅覚から過去の記憶が呼び覚まされる心理的な現象が、
「マドレーヌ効果」、「プルースト現象(効果)」、「無意識的記憶」と称されることがあるようです。
Imo Kuri Nankin いもくりなんきんでは、この伝統あるマドレーヌに、
さつまいもを加えることで、新たな魅力あるお菓子に仕上げました。
焼き立てのさつまいもに、バターってとても合うのです♪
そして優しく香ばしいバターの香りが漂ってくると、
私はいつも本を読みながら紅茶を楽しんだ記憶が呼び覚まされるのです。
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